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痛風/千代田朋仁クリニック
痛風/千代田朋仁クリニック
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循環器

 
 

高血圧症

 

高血圧症とは全身の動脈の血圧が慢性的に高い疾患です。放置すると動脈硬化がすすみ、脳卒中、狭心症(心筋梗塞)、心不全、大動脈瘤、慢性腎不全などの心血管病変の最大の危険因子です。高血圧の定義は、上腕動脈での血圧測定値が140/90mmHg以上とされています。血圧の測定値は多くの条件に影響されるので、安静時に座位で複数回測定した平均値から診断します。高血圧症には本態性と二次性があります。本態性高血圧は原因が明らかでなく、遺伝的な要素が大きい高血圧症で、大部分の症例が含まれます。加齢、肥満、塩分の取りすぎ、アルコールの多飲、運動不足なども、発症の要因です。治療の基本はお薬を毎日きちんと内服することです。降圧薬にはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、降圧利尿薬、ベータ受容体阻害薬、カルシウム拮抗薬、アルファ受容体遮断薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)などがあります。患者さんに応じて種類と投与量を調節し、120/70mmHg程度に安定するように維持処方を決めます。糖尿病や腎疾患がある場合は、130/80mmHg以上でも積極的な治療が望まれます。お薬以外にも、適度の運動を行い、肥満、お酒の飲みすぎ、喫煙を避けることも大切です。二次性高血圧は腎血管性高血圧症や、ある種の内分泌性腫瘍(原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など)に合併する、まれな高血圧症です。腎血管性高血圧症では腎動脈形成術、内分泌性高血圧では原因腫瘍の摘出術が、主な治療法です。

心不全

 

心不全とは、体の正常な活動に必要な心臓の働きが不足しているため、安静時や労作時に息切れや倦怠感などの症状がある状態で、病気の名前ではありません。よく知られたニューヨーク心臓協会の重症度分類では、症状を伴う労作の程度に応じて、心不全を大まかにT度からW度に分類しています。T度は日常労作では症状がない状態、U度ではやや強い労作(階段や坂道を登るなど)で、V度は軽い労作(近所まで歩くなど)で、W度は安静時でも症状がある状態です。心不全の診察所見はまちまちなので、いろいろな検査で重症度を客観的に評価する必要があります。心電図と胸部X線は基本的な検査で、血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の値も参考になります。ドップラー心エコー図は非常に有用な検査で、心臓のポンプ機能の評価(左室収縮能と拡張能、両心室の大きさと壁の動き、心房の大きさ)、器質的心疾患の有無と程度などが、画像的に評価できます。心不全の多くは左室のポンプ機能の低下(収縮不全)が原因ですが、拡張機能の低下が原因のこともあります。左室に血液が入りにくいため肺に溜まる状態で、約30―50%にみられます。心不全の治療の基本は基礎心疾患の治療です(各疾患の項を参照して下さい)。左室収縮不全に対する経口薬には、ACE阻害薬、ベータ遮断薬(カルベジロールなど)、ジギタリス薬などがあります。その他利尿薬や硝酸薬を適宜使用します。入院時にはカテコールアミン、硝酸薬、心房性利尿ペプチド製剤、ホスホジエステラーゼ阻害薬などを経静脈的に投与し、病態の安定化を図ります。心不全を悪化させる感染症、不整脈、高血圧、腎機能低下、貧血などを治療し、飲酒、塩分摂取過多、安静の不徹底、内服薬の継続中断などを除去することも大切です。

狭心症

 

心臓の筋肉に血液(=酸素)を送っている冠動脈が細くなって、血液が充分に送られないので(虚血)、胸痛発作が起こる疾患です。動脈硬化のため冠動脈内腔が狭くなることが最も多い原因ですが、正常な冠動脈が一時的に収縮しても起こります。危険因子は喫煙、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧症、狭心症の家族歴などで、50歳以上の男性や更年期以後の女性に多い疾患です。前胸部が圧迫される、締め付けられるような不快感が、1−5分持続します。ときに上腹部、背中、下顎に感じたり、腕や肩に放散したり、息苦しさ、発汗、吐き気、めまいなどを伴います。労作(速足歩行、階段を昇るなど)や精神的なストレスが誘因となり、食後や寒冷時にも起こります。安静やニトログリセリンの服用でおさまります。発作の程度が以前より強くなったり、安静時にも起こる場合は不安定狭心症と呼び、心筋梗塞の前兆となることがあります。狭心症の発作時には心電図のSTという部分が低下ないし上昇します。安静時の心電図は正常なことが多く、運動負荷心電図(トレッドミルなど)や24時間心電図でST変化を検出します。安静時心電図ですでにST変化がある場合、膝痛などで運動負荷が困難な場合は、タリウムシンチグラフィーという検査が有用です。これらの検査で狭心症が強く疑われれば、冠動脈造影を施行し、狭窄の部位と程度を確定します。症状や病変の重症度によって、薬物療法(ベータ遮断薬、アスピリン、硝酸薬、ACE阻害薬など)に加えて冠動脈形成術、ステント挿入、冠動脈バイパス手術が選択されます。高コレステロール血症に対してはスタチン系の抗脂血症薬が投与されます。

心房細動

 

心房細動は心室の上にある心房(左房ないし右房)から生ずる不整脈です。正常な心臓では、右房にある洞結節から電気的刺激が規則的に発生して心室に伝わり、心室を収縮します(洞調律)。心房細動ではこの正常な伝導経路の代わりに、心房から発生する多数の不規則な刺激が心室を収縮するため、心拍が不規則に(普通は速く)なります。心房細動は最も多い不整脈で、加齢に伴い頻度が増加し、80歳代では約5%にみられます。心房細動と洞調律が交代する場合を発作性心房細動、洞調律に戻らない場合を慢性心房細動といいます。症状がないこともしばしばですが、動悸、めまい、胸痛を生じ、頻脈が続けば心不全を起こします。心房の収縮が不規則で弱いため、心房内血液がうっ滞し、血液が固まりやすくなります(血栓)。血栓が脳に飛ぶと脳梗塞を起こします。予防するために、抗凝固薬(ワーファリン)や抗血小板薬を投与します。心房細動の多くの症状は、心拍数を正常に保つことで改善します。この目的でベータ遮断薬やジギタリス薬が投与されます。洞調律に戻す方法には、抗不整脈薬の投与(内服、静注)や電気的徐細動があります。難治例には、高周波カテーテル・アブレーション(心筋焼灼術)や外科的手術(メイズ手術)を選択する場合もあります。

房室ブロック

 

心臓を動かす電気的刺激は洞結節から発生し、房室結節、ヒス束、左脚と右脚、プルキニエ線維、心筋細胞の順に伝わります。房室ブロックとは心臓の刺激伝導系の機能的、器質的異常のため、電気的刺激が途絶される状態です。ブロックがある伝導系の場所と範囲で、臨床所見と治療が異なります。心電図上では1度、2度、3度ブロックに大別されます。1度ブロックは心電図上のPR間隔が0.20秒以上の延長と定義され、Pに続くQRS(心室興奮)がみられます。高齢者や運動選手に多く、一般的に治療は不要です。2度ブロックはさらにモビッツ1型(ヴェンケバッハ型)とモビッツ2型に分類されます。1型ブロックでは徐々にPR間隔が延長し、遂にはQRSが脱落します。普通は無症状で,治療は不要です。モビッツ2型ではPR間隔が一定で突然QRSが1拍脱落し、これを繰り返します。2型ブロックは完全房室ブロックに移行する危険があります。3度ブロック(完全房室ブロック)では、P波とQRS波が完全に解離して無関係に出現し、著明な徐脈を呈します。モビッツ2型2度ブロックや3度ブロックでは、徐脈や一時的心停止によるめまい、失神(アダムス・ストークス発作)が起こり、埋め込み式ペースメーカーの適応となります。右脚、左脚ブロックでは、電気刺激がブロックのない脚を先に通過してから対側の心室に伝わるので、心収縮は保たれます。右脚ブロック+左脚の前枝または後枝ブロックを2枝ブロックと呼び、残りの1枝が途絶すれば完全房室ブロックに移行するため、ペースメーカーの適応となります。

洞不全症候群

 

洞結節が正常に働かなくなり、徐脈性、頻脈性不整脈が発生し、動悸やめまい、失神などをきたす疾患です。刺激伝導系の異常を伴うことが多く、加齢に伴う変性、心筋虚血、アミロイドーシス、心筋症などが原因です。ベータ遮断薬などの副作用のこともあります。ルビンシュタイン分類の1型は持続性の高度徐脈(50/分以下)、2型は洞停止や洞房ブロックによる数秒以上の心停止、3型は徐脈頻脈症候群と呼ばれ、発作性頻脈性不整脈(心房細動など)と洞停止が交互に出現します。12誘導心電図や長時間心電図で、症状に一致する高度の徐脈や3秒以上の洞停止などを認めれば、洞不全症候群と診断できます。失神や心不全合併例の治療は体内式ペースメーカーの埋め込みです。ペースメーカーへのつなぎとして、イソプロテレノールやアトロピンの静注や、一時的ペーシングが行われます。失神発作のない軽症例では、ベータ受容体刺激性薬剤の経口投与も使用されます。頻脈性不整脈や脳血栓の予防として、抗不整脈薬や抗凝固薬(ワーファリン)を投与します。

発作性上室性頻拍症

 

安静時、労作時に関係なく起こり、突然始まり数分―数時間持続する、規則的で速い(160−200/分)不整脈です。心室より上から発生し、心室性頻拍症と異なり、生命の危険は少ない不整脈です。一見健康な若年者にも多くみられます。上室性早期収縮が特別な回帰性刺激伝導回路に入り、その結果心室を繰り返し刺激することで起こります。房室結節の二重伝導路(遅、速伝導路)による場合(房室結節リエントリ−)と、心房心室間の副伝導路による場合(房室回帰)に大別されます。心房自体の速い反復性の刺激でも起こります(心房性頻拍症)。症状は、動悸、息苦しさ、脱力感、めまいなどです。発作開始後早期では、迷走神経を刺激する種々の手技を用いて、心拍数を減らし発作を停止できることもあります。例えば息こらえをする、頚動脈洞を圧迫する(医師による実施が望ましい)、冷水に顔を浸すなどです。発作が20分以上続けば、専門医の診察が望まれます。多くの場合、抗不整脈薬(アデノシン、ベラパミルなど)の静注で、発作は容易に治まります。薬で停止しない場合は電気徐細動器で直流通電を行います。抗不整脈薬、ベータ遮断薬、ジギタリスなどが予防的に投与されますが、発作の完全な消失は困難です。近年、高周波カテーテル・アブレーションが適応症例に施行され、90%以上の治癒率を挙げています。

WPW(Wolf−Parkinson−White)症候群

 

心房と心室の間にあるケント束という副伝導路のため、特徴的な心電図所見を呈し、発作性頻拍症を合併する症候群です。人口1000人中1―3人の頻度でみられます。伝導速度の速い副伝導路を介して心室が興奮するため、心電図ではPR時間が短縮し(0.12秒以下)、早期興奮の波形(デルタ波)と正常心室興奮との融合波が見られます。ケント束の部位に応じて、心電図V1誘導の波形が異なります。A型(左室自由壁)は高いR波、B型(右室自由壁)は深いS波、C型(心室中隔)はQSやqR波を呈します。副伝導路と正常伝導路がリエントリー回路を作るため、約半数の症例で発作性上室性頻拍が合併します。生命予後は良好ですが、年に1人程度の突然死がみられます。頻拍症の治療にはアデノシンや抗不整脈薬の静注、電気的徐細動が試みられます。ジギタリスやベラパミールは副伝導路をブロックしないので使えません。経口抗不整脈薬で頻拍発作を予防するのは困難ですが、ケント束に対する高周波カテーテル・アブレーションは根治的で、成功率も95%以上です。約半数の症例では頻拍発作がなく、経過観察で充分です。

心臓弁膜症

 

心臓には僧房弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁があり、各弁に狭窄(血液の通過困難)と閉鎖不全(血液の逆流)が起こりえます。弁膜症の原因疾患は非常に多く、先天的と後天的異常に大別されます。臨床所見と治療方針は異常弁の数、狭窄ないし逆流の程度、罹患期間によって規定されます。心臓エコー検査でのみ検出できる軽度な弁膜症は治療不要です。かなりの弁膜症でも、心筋組織が弁の異常に打ち克つように変化するため、内科的治療のみで長い間経過を観察できます。しかし弁膜症は弁組織の機械的な欠陥なので、重症例では内科治療は限界があります。進行例では呼吸困難、動悸、胸痛、めまい、易疲労感などが出現し、心不全となります。根本的な治療は開胸手術による弁置換術(機械弁、生体弁)ないし弁形成術です。症例によってはカテ−テルによる経皮的弁形成術が選択されます。症例に応じて手術の適応と時期を決定することが重要で、臨床症状に加えてドップラー心エコー検査による定期的な評価が必要です。抗生物質による感染性心膜炎の予防、心房細動合併例での抗凝固薬による脳血栓の予防も重要です。ここでは臨床的に多い僧房弁、大動脈弁疾患について述べます。

1)僧房弁狭窄症(Mitral Stenosis:MS)
正常僧房弁の弁口面積は4−6cm2ですが、MSではその半分以下のため、左房から左室への拡張期血流が阻害されます。その結果、左房圧が左室圧より高くなり(圧較差)、左房拡大、肺静脈圧上昇、肺高血圧症をきたします。左房拡大のため高頻度に心房細動を合併し、左心耳内などに血栓ができやすくなります。MSの大半はリウマチ熱の後遺症で、弁交連部の癒合,弁と腱索の線維性肥厚や石灰化があり、僧房弁逆流や大動脈弁異常を多く合併します。心エコー図では弁の形態異常、弁口面積と圧較差の測定、左房内血栓の有無、肺高血圧症の程度、他の弁膜症の有無などが検出できます。弁口面積が1.5cm2以上で無症状、洞調律なら経過を観察します。心房細動例ではジギタリスなどで心拍数をコントロールし、ワーファリンで抗凝固療法を行います。弁口面積1.5cm2以下で症状があり、かつ弁の可動性が保たれていれば、経皮経静脈的僧房弁交連裂開術(PTMC)の適応です。それ以外の重症例、かなりの僧房弁逆流がある例、左房内血栓の症例では外科治療(直視下交連切開術、弁置換術)を行います。心房細動合併例では、除細動の目的でメイズ手術も同時に施行されます。

2)僧房弁逆流症(Mitral Regurgitation:MR)
僧房弁閉鎖不全症ともいい、左室収縮時に僧房弁が正常に閉じないので、左房へ血液が逆流する疾患です。最も多い原因は弁線維組織の粘液腫性変性で、強靭な支持組織である弁が伸びきった状態になり、収縮期に弁が左房側に逸脱する疾患です。虚血性ないし拡張型心筋症では、左室拡大のため腱索と弁尖が心尖側に引っ張られて癒合しなくなります。その他、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、膠原病の心病変などが原因疾患です。逆流の大きさに応じて1度(軽症)から4度(重症)に分類されます。聴診では高調な全収縮期雑音が、心尖部で聞こえます。慢性MRでは逆流のため前向きの駆出血液量は減りますが、左室が代償的に大きくなり、長期間有効拍出量を保ちえます。しかし、重症のMRではある時点で左室の予備能が破綻し、心筋の収縮力が低下します。内科治療は心臓の負担を軽くする目的で、ACE阻害薬などが投与されます。3度以上のMRで胸部症状が強い症例や、症状が軽くても左室心筋の収縮力が低下している(心エコー図の左室駆出率<60%、収縮末期径>45mm)症例では、手術適応となります。僧房弁逸脱であれば弁形成術、リウマチ性MRなどで弁の変形が強い場合は、弁置換術が選択されます。

3)大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis:AS)
加齢に伴う大動脈弁の石灰化、リウマチ性弁膜病変、先天性大動脈二尖弁などが原因で弁口面積が狭くなり(正常は3−4cm2)、左室―大動脈間に圧較差が生じます。聴診では胸骨右上縁から心尖部にかけて、荒い駆出性雑音が聞こえます。心エコー図では弁エコー輝度の上昇と開放制限がみられ、ドップラー法の最大流速から圧較差が測定できます。3.0m/sec(36mmHg)以下を軽症、3.0−4.0m/sec(36―64mmHg)を中等症、4.0m/sec(64mmHg)以上を重症とします。心エコー法やカテーテル法で測定される弁口面積では、1.5cm2以上が軽症,1.0―1.5cm2が中等症,1.0cm2以下が重症です。左室の余分な血圧負担のため左室肥大が生じ、収縮能は長い間保たれますが、末期には低下し心不全になります。狭窄のため有効な拍出量が減り、心肥大のため相対的な虚血が起こり、狭心症と似た胸痛や失神が起こります。中等症以上の症例では、心室性不整脈による突然死の危険があります。胸痛、失神、心不全が出現すると、手術なしでは約半数が2年以内に死亡します。症状のある中等症以上のASは大動脈弁置換術の適応です。

4)大動脈逆流症(Aortic regurgitation:AR)
大動脈弁閉鎖不全症ともいい、拡張期に弁が正常に閉じないため、大動脈へ送り出された血液の一部が左室に逆流する疾患です。弁自体の異常や弁輪の拡大のため、弁の端が正確に合わないことが原因です。先天性大動脈二尖弁、大動脈石灰化(狭窄症を伴う)、心内膜炎、リウマチ熱、膠原病の心病変などが弁異常の原因です。弁輪拡大はしばしば原因が不明ですが、加齢、高血圧、マルファン症候群、大動脈解離、梅毒などで生じます。聴診では大動脈弁領域に、弱い高調な拡張期雑音が聞こえます。ARでは拡張期血圧が下がり、収縮期圧との差が増大します。逆流のため左室には余分な容量負担がかかり、左室は拡大します。3度以上のARでも、この代償機序のおかげで長い間症状なく経過します。ドップラー心エコー図では弁自体の異常、弁輪の拡大、逆流の程度、左室機能の評価ができます。症状のある中等度以上の症例、無症状でも左室駆出率の低下(55%以下)や内腔の拡大(収縮末期径55mm以上)がある症例では、弁置換手術の適応となります。

拡張型心筋症(Dilated Cardiomyopathy:DCM)

 

DCMは心筋の収縮力が低下し、代償的に心臓が拡大する疾患で、厚生省の難病に指定されています。平成11年の全国統計では10万人に14人でしたが、実際はもっと頻度は高いと推定されます。20―60歳代に好発し、男性にやや多くみられます。原因は不明ですが、遺伝子の異常に後天的要素が加わって、発症すると考えられます。家族性DCMは20-40%にみられ,主に常染色体優性遺伝です。ウイルス性心筋炎が自己免疫的な機序で慢性化し、DCMに移行するとの説もあります。アルコール多飲、妊娠、甲状腺の病気、持続性頻拍症など、原因が比較的明らかな場合もあります。臨床所見、予後は心筋収縮低下の重症度にほぼ比例します。軽症では一生無症状のこともありますが、重症例では早期に心不全となり、突然死の危険もあります。心房細動などの不整脈をしばしば合併し、脳血栓の合併もあります。胸部X線では心拡大、心電図では左室肥大、ST-T変化、不整脈、伝導障害などがみられます。心臓エコー検査では左室ないし右室の拡大と壁運動の低下があり、心カテーテル検査で冠動脈が正常であれば、DCMと診断できます。近年のACE阻害薬、β遮断薬などによる心不全の治療の進歩で、予後が著明に改善しました。最近では、QRS延長があり駆出率が35%以下で、NYHAV度以上の症例では、ペースメーカーによる心臓再同期療法が行われ、良好な成績が得られています。心室頻拍による突然死の予防に埋め込み型除細動器(ICD)も使用されます。僧房弁逆流を合併しやすく、外科的治療も行われます。心移植は日本ではいろいろな事情で普及していません。

肥大型心筋症(Hypertrophic Cardiomyopathy:HCM)

 

HCMは心臓の壁の一部が厚くなる疾患で、心筋収縮蛋白を発現する遺伝子の突然変異が原因です。病院で診断される頻度は1000人に2人程度です。左室の収縮能は正常なことが多く、拡張障害が特徴です。高血圧症や大動脈弁狭窄症の対称的肥大とは異なり、心筋肥大は偏っています。多くは心室中隔が肥大し、左室流出路の閉塞をしばしば伴います。閉塞性HCMでは、僧房弁前尖が収縮期に心室中隔側に接近します。その結果、左室―大動脈圧較差、左室の圧負荷、拍出量低下が生じ、労作時の呼吸困難、めまい、失神などの症状を起こします。運動負荷時にのみ流出路閉塞が出ることもあり、注意が必要です。一方、非閉塞性HCMは比較的無症状で、予後も良いのですが、拡張障害の結果いずれは左房拡大、心房細動をきたします。日本人に多い心尖部HCMでは、心電図上左胸部誘導で深い陰性T波がみられます。HCMの治療は、圧較差を減少する目的で、弱心作用のあるベータ遮断薬が第1選択です。薬で症状が改善しなければ、中隔心筋部分切除術、経皮的中隔心筋焼灼術、DDDペースメーカーも行われます。拡張障害に対してはベラパミルなどのカルシウム拮抗薬が投与されます。肥大型心筋症の一部は拡張型心筋症の病態に移行し、左室不全を呈します。心室頻拍、細動による突然死を予防する目的で、埋め込み型除細動器(ICD)も使用されます。

神経調節性失神

 

神経調節性失神は最も多い失神発作です。発症機序は、外的誘因が中枢神経系を介して起こす、迷走神経刺激性の血管運動反射です。結果的に一過性に低血圧、徐脈となり、脳虚血による失神が起こります。血管迷走神経性失神とほぼ同義ですが、より広い概念です。外的要因には長時間の立位、採血などの不快な刺激や疼痛、排尿や排便,咳、強い情動などがあります。比較的若い人に多く、同じ刺激に対して失神が再発します。めまい感、吐き気、発汗、耳鳴り、視覚異常などが前ぶれのこともあります。高齢者に多い頚動脈洞失神は、頭の後屈や襟による頚部圧迫が誘因となります。発作時は仰向けで寝かせ、胸元と衣服を緩めると、脳血流が回復し、意識が戻ります。くわしく病状を聞くことが診断に最も大切です。時にはチルト(head up tilt)試験といって、傾斜台の上で受動的に起立位をとらせ、失神を誘発することもあります。治療には、予後が良いことを納得させることが大切です。昇圧薬、ベータ遮断薬、抗コリン作用のある抗不整脈薬などの投与も試みられます。難治例ではペースメーカーの植え込みも行われます。

胸部大動脈瘤

 

結合組織の先天的異常、外傷、炎症などが原因で胸部大動脈の壁が脆くなり、その結果一部が瘤のように拡大する疾患です。進行すると破裂の危険があり、一旦破裂すると治療なしでは致死的です。全周性に拡大する紡錘状動脈瘤と、部分的に突出する嚢状があり、後者は破裂しやすいとされています。また瘤内に血栓が発生し、末梢に飛んで脳血栓などを起こします。胸部大動脈瘤は腹部大動脈瘤より頻度は少なく、組織学的にはのう胞性中膜変性が主な原因です。部位別では上行大動脈(60%),下行大動脈(40%),弓部(10%),胸腹部大動脈(10%)に分類されます。瘤は徐々に拡大し初期は無症状なので、胸部X線で偶然に発見されます。進行すると周囲組織を圧迫して、胸背部痛、咳、呼吸困難、声が出ないなどの症状が起こります。経食道エコー、胸部造影CTなどで定期的に瘤径を測定して、手術の時期を決定します。高血圧は瘤の拡大、破裂の危険因子なので、ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬などを投与し、収縮期圧110mmHg以下に下げます。正常な胸部大動脈径は2.5cm前後で、瘤径が6cm以上になると手術適応です。外科手術では瘤の部分を人工血管で置換します。近年カテーテルを用いたステント留置も試みられています。

心房中隔欠損症(Atrial Septal Defect:ASD)

 

胎生期の心臓の発生異常により、心房中隔に欠損孔が残り、左右心房間の血流の短絡(シャント)が生ずる先天性心疾患です。最も多いのは二次孔欠損で(約3分の2)、中隔中部の卵円孔の部分に欠損があります。一次孔欠損(15%)は中隔下部にあり、心内膜欠損症という疾患の一部です。その他静脈洞欠損(10%)、冠動脈洞欠損(まれ)があります。普通は左房圧が高いので左→右シャントが起こります。聴診では肺動脈領域の収縮期雑音と第2心音の固定性分裂が特徴的です。胸部X線では左2,3弓の突出、肺動脈拡大がみられます。心電図では二次孔欠損では右脚ブロックがみられます。ドップラー心エコー検査、心臓カテーテル検査で欠損の部位とシャントの大きさが診断できます。大きなASD(肺体血流量比が2以上)では乳幼児期に心不全が出現し、外科治療の適応となります。1.5―2程度のASDでは,加齢に伴って呼吸困難や不整脈(心房細動)が出現し、手術適応となります。外科治療はパッチによる欠損孔閉鎖ですが、二次孔以外の欠損では、ASD以外の心奇形に対する手術もしばしば必要です。最近では、カテーテルによる経皮的欠損閉鎖術も行われます。

心室中隔欠損症(VSD)

 

心室中隔に欠損孔があり、左右心室間にシャントが生ずる先天性心疾患です。欠損部位により膜性欠損と筋性欠損に大別され、筋性VSDはさらに流入路、筋性部、漏斗部欠損に分類されます。頻度は新生児1000人中2、3人で、乳幼児期先天性心疾患の約半数です。欠損孔が大きいほど重症で、普通は左→右シャントが起こり、肺血管、左房、左室の容量負荷が生じます。成人でみられるVSDは小さな膜性欠損がほとんどで、欠損孔が縮小、消失することもあります。聴診上は荒い全収縮期雑音が特徴的です。中等度以上(肺体血流量比1.4以上)のVSDでは,胸部X線上の心拡大や肺動脈拡大、心電図では左室、左房拡大の所見がみられます。確定診断はドップラー心エコー検査、心臓カテーテル検査でなされます。肺体血流量比が1.5以上で、胸部症状や心不全があれば、乳幼児期に欠損孔パッチ閉鎖手術が勧められます。

大動脈二尖弁

 

大動脈弁の数は正常では3枚ですが、本症では胎児性の大動脈弁形成異常のため、大小の非対照的な2枚の弁となっています。4尖弁や1尖弁となる事もあります。欧米では1〜2%の頻度といわれ、最も多い成人の先天性心疾患です。弁の異常に加えて、大動脈壁の変性があり、大動脈拡大、解離性大動脈瘤をしばしば合併します。中等度以上の逆流症では、若年で呼吸困難などの胸部症状が出現します。また三尖弁より弁口面積が小さい血流によるストレスが大きい事が原因で、40歳代で石灰化が始まり、大動脈弁狭窄症(AS)を生じます。AS症例の約半数は本症が原因です。聴診では大動脈弁領域の拡張期、収縮期雑音が聞こえます。ドップラー心エコー検査、心臓カテーテル検査で、診断と重症度が確定されます。治療方針は他の原因による大動脈弁膜症に準じますが、大動脈近位径が5p以上であれば、人工血管の適応です。細菌性心内膜炎に対する予防も大切です。

急性心膜炎

 

心膜炎は心臓をおおう心外膜の炎症で、急性心膜炎と慢性心膜炎に大別されます。ウイルス感染症、膠原病、尿毒症、悪性腫瘍、胸部外科手術、放射線治療、急性心筋梗塞、外傷などに続発しますが、原因が明らかでない特発性心膜炎も多くみられます。ウイルス性、特発性心膜炎では、発熱などの感冒様症状に続いて前胸部痛(深呼吸で増悪、前屈位で軽快)、乾咳、易疲労感などが起こります。聴診では特徴的な心膜摩擦音が時に聞こえます。心電図では、ほぼ全誘導に出現するST上昇と続発するT波の陰性化が、診断的な所見です。心エコー図では心のう液貯留がみられます。治療は対症療法で、非ステロイド系抗炎症薬が投与され、無効例ではステロイド薬が短期間使用されます。心のう液が急速、大量に貯留すれば、心室の拡張障害による心タンポナーデが起こります。血圧低下、頚静脈怒張などがみられ、心エコー図では右室、右房の拡張早期の虚脱が診断的です。心膜炎の原因の診断、タンポナーデの解除を目的として、心膜穿刺が行われます。

慢性収縮性心膜炎

 

心膜の線維性肥厚や癒着、石灰化のために心臓の拡張不全をきたす疾患です。症状は低心拍出量による呼吸困難や易疲労感、うっ血による頚静脈怒張、浮腫、腹水などです。原因は急性心膜炎とほぼ同様で、約10―15%が慢性収縮性心膜炎に移行します。過去に多かった結核性心膜炎は近年減少しています。胸部X線、心エコー図、CTでは心膜の肥厚、石灰化が認められます。ドップラー心エコー図では呼吸に伴う特徴的な左室血流流入パターンがみられ、心カテーテル法で右房圧、右室拡張期圧、左房圧、左室拡張期圧の均一化(5mmHg以下)、両心室圧のdip and plateauパターンを認めれば、診断が確定します。本症は慢性、進行性で、心膜切除術が唯一の根本治療ですが、手術のリスクも高く、適応の決定とタイミングが重要です。

  日本循環器内科学会 循環器専門医
元東京大学部医学部付属病院 循環器内科
 
助教 村田 一郎