肝障害の原因は多岐にわたりますが、日本で多いのはウイルス性肝炎、脂肪肝です。肝炎ウイルスは、A型、B型、C型、D型、E型などがありますが、慢性化し、問題となるものはB型・C型肝炎ウイルスです。例えば肝硬変の原因としてはC型肝炎が60%、B型肝炎が15%を占め(アルコール性15%)、肝がんの原因としてはC型肝炎80%、B型肝炎10%となっています。
慢性肝炎や肝硬変の初期まではほとんど症状がありません。20-30年の経過で進行して非代償性肝硬変になると初めて腹水、浮腫、消化管出血、黄疸、といった症状がみられます。肝臓の機能が低下するため、解毒されなかった物質が脳に達して意識障害などの精神症状を起こすものを肝性脳症といい、末期に出現します。クモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房などもおこります。この他、腹壁静脈怒張、食道静脈瘤(*)などがみられますが、いずれも無症状のため、健診などで肝機能異常が見られた際には、一度は採血によるこれらウイルス性肝炎の検査をします。その後、画像診断として超音波、時にCTなどを行います。さらにこれらの検査では肝がんの早期発見も同時に行われます。食道静脈瘤が疑われれば、上部消化管内視鏡検査をします。
診断がつけば、B型・C型肝炎ウイルスそれぞれに対しての治療を行います(後述)が、原因如何により慢性肝炎では肝炎進行の防止(ウルソデオキシコール酸内服や強力ミノファーゲンCの注射、瀉血療法など)を、肝硬変となれば、腹水・浮腫には塩分制限とともにアルブミン製剤や利尿剤の投与を、また肝性脳症には、良質たんぱく質の投与や便通コントロールといった対症療法をします。また、高率に合併する肝がんの早期発見に努めなければなりません。
C型肝炎ウイルス:主な感染経路は輸血や血液製剤、汚染された注射針(麻薬や覚醒剤の乱用)、入れ墨、医療従事者の針刺し事故、母子間感染などです。現在輸血後肝炎の新規発症はほとんどみられなくなりました。C型肝炎ウイルスは、日本人の1〜1.5%にみられます。感染後高率に(約60〜80%)慢性肝炎に移行します。C型慢性肝炎に移行後の自然治癒はまれであり、ゆっくりと進行、やがて肝硬変に至り、肝がんに進展します。自覚症状はほとんどなく、患者の約半数は健診や人間ドック、献血時、あるいは他の病気で療養中に偶然発見され、診断されます。慢性肝炎では、ウイルスを排除するための根治療法として1年間、週1回の「ペグインターフェロン」の注射と経口抗ウイルス薬「リバビリン」を併用する強力な治療法があります。65歳くらいまでが対象となりますが、時に70歳を超えても行なうことがあります。ウイルスを排除することが出来るのは50-80%前後で、ウイルスのタイプや量によって異なります。インターフェロンの副作用には発熱、食欲不振、血球減少、脱毛、眼底出血、糖尿病の悪化、心臓病の悪化、間質性肺炎、甲状腺機能異常などがあります。またうつ状態が出現する場合があります。リパビリンの副作用としては貧血があります。その他まれに頭蓋内出血を起こすことがあり、高血圧・糖尿病のある方は相談が必要です。
B型肝炎ウイルス:幼少期以降で感染すると多くの場合、急性肝炎後に治癒(ただし、1%で劇症肝炎という命に関わる事があります)する、一過性感染で終わります。しかし、幼少期以前に感染すると、ウイルスが排除されず慢性化します。
慢性化症例の主な感染経路は母子間感染です。B型肝炎ウイルスは日本人の1%程度で、高齢者ほど多くなります。B型肝炎は自然経過で35歳くらいまでに臨床的治癒へ移行する例が多ものの、活動性のある肝炎が持続する場合には治療が必要になります。若年者ではインターフェロンが、35歳以降では、経口抗ウイルス薬の長期内服が必要になります。ただし、経口抗ウイルス薬は耐性ウイルス出現の問題もあり、専門医による処方が必要と考えられます。また、B型肝炎ウイルス感染では肝炎が落ちついた状況でもがんが生じることがあり、問題なくても年1回の超音波などの画像検査は必須です。
*食道静脈瘤:肝硬変に伴い食道の粘膜面を流れる静脈に大量の血液が流れ込むため、食道の静脈が瘤のようになります。無症状ですが、時に食道内腔に破裂し、吐下血といった大出血を起こします。食道静脈瘤の有無を確認するためには、上部消化管内視鏡検査が必要です。破裂しそうなサインがあれば、予防的治療を行うため、連携している医療機関に紹介します。 |