以下に個々の疾患について説明してみます。
1) 関節リウマチ病名の説明
以前は「慢性関節リウマチ」という病名でした。
最近「慢性」を取った病名の「関節リウマチ」になりました。
古い本、あるいは法律用語などでは「慢性関節リウマチ」が使われていますが
「関節リウマチ」と同じです。
なお英語で検索する時はrheumatoid arthritisです。
疫学
世界規模では、地域的におおきな偏りはほとんどなく分布し、
どの地域でも大体人口の0.5-1.0%の患者数です。わが国では約70万人の患者数です。
男女比は約1:4で女性に多く、30-50歳が好発年齢です。
よく誤解されているところですが、高齢の方の病気ではありません。
病態
関節を包んでいる滑膜という組織に生じる炎症が病態の中心です。
炎症が持続すると滑膜が腫れてきて、さらに周囲の骨が破壊されます。
したがって、いきなり骨に変化がおきるわけではありません。
症状
症状は全身症状としては全身倦怠感、疲れやすさ、などがあります。
関節症状は、まず朝の起床時の「手のこわばり」が、重要です。
これは短時間ではなく一時間以上続きます。朝だけでなく、たとえば昼寝したあとなどにも生じます。
では、関節がどのような状態になるのでしょうか。
関節リウマチでは痛みだけではなく腫れることが重要です。
しかも、その腫れが少なくとも6週間は続きます。
数日から一週間くらいで腫れがひいてしまうばあいは関節リウマチ以外の疾患の可能性が
大きいといえます。症状がでやすい関節は手では指の先端の関節以外の関節です。
ほかには手首、肘、足のゆび、足首、膝、股関節、首の頚椎などです。
典型例では左右に対称的に関節症状が生じてきます。
あごや、鎖骨と胸骨の間にも関節炎がおきることがあります。
検査
まずレントゲン写真をとります。
通常手の指、足のゆび、そして症状のある関節を撮ります。
足のゆびには症状を自覚していない場合もあり症状がなくても足のゆびは必ず撮ります。
時に「間質性肺炎」を合併することがあるので、胸のレントゲン写真も初診時には撮ります。
血液と尿の検査も行います。血液では、通常の健康診断で行うような項目以外に、CRP、赤沈、リウマトイド因子、抗CCP抗体、
マトリックスメタロプロテナーゼ-3などの測定を行います。
診断
診断は、自覚症状、関節の腫れた状態、レントゲン写真、血液検査の結果などを総合して行います。
よく誤解されていることですが、リウマトイド因子だけで診断はつきません。
リウマトイド因子は関節リウマチでは約8割の方が陽性になりますが、2割の方は陰性です。
一方、住民を対象とするような健康診断などで測定すると数%の方で陽性になります。
つまり関節リウマチの方でも陰性の場合があり、関節リウマチでない方でも陽性になる場合があるので、
この検査結果が陽性となっただけで、関節リウマチと診断できるわけではありません。
治療
診断がついたら通常、抗リウマチ薬というリウマチの治療薬の内服をはじめます。
世界的な標準薬はメトトレキサート(商品名リウマトレックス、メトレート、メソトレキセートなど)です。
わが国では、サラゾスルファピリジン(商品名アザルフィジンなど)やブシラミン(商品名リマチル)なども、よく使います。
古い薬ですが、金の注射薬(商品名シオゾール)もいまでも有効な治療薬として使われています。
最近、タクロリムス(商品名プログラフ)も使用可能となりました。
関節リウマチの治療は原因を取り除く治療ではないので、根治あるいは完治という表現はつかいません。
関節リウマチの治療では、薬を使い続けてあたかも完全に治ったような状態にすることを目標とします。
このような状態を「寛解(かんかい)」といいます。
「治療はずっとつづけるのですか?」という質問をよくうけますが、
原則として薬を途中でやめることはありません。
いったん中止した場合、再開しても以前と同じ効果がかならずしも出ない場合もありますので、けっして御自身の判断で内服を中止しないでください。
新しい治療
現在、内服薬よりも強力な「生物学的製剤」の点滴(商品名レミケード)、
あるいは皮下注射(商品日エンブレル)による治療もあります。
今後、さらに、あらたな生物学的製剤も使用可能になる予定です。
詳細は担当の医師から説明を受けてください。
2) ベーチェット病病名の説明
「ベーチェット」は1937年に症例を報告したトルコ人の皮膚科医の名前です。
しかし、京大眼科教授の重田達夫は1924年に症例を報告していました。
そのほかベーチェット以前にも何人かの医師が症例報告していましたが、ベーチェットはあたらしい疾患であると主張し、現在ではベーチェット病とよばれるようになっています。
なお、英語で検索するときはBehcet's diseaseです。
疫学
世界的にはいわゆるシルクロードに沿った地域に多くみられます。
つまり日本、朝鮮半島、中国、から中近東、地中海沿岸諸国です。
人口に対する患者数の比率ではトルコがもっとも高頻度です。
しかし、患者数ではわが国が最大で、約1万6千人です。
わが国の中でも分布に偏りがあり北に多く南に少ない傾向があります。
都道府県別では北海道がもっとも高頻度です。
地域別で患者数をみると関東地方が最大です。
病態
白血球の好中球という細胞の機能が亢進している状態が病態の中心にあります。
この好中球によって炎症がおきやすい状態になっています。
さらに、免疫異常、血栓のできやすさ、なども病態に関連しています。
症状
4つの主な症状があります。
1)くりかえす口腔内のアフタ性潰瘍
2)ぶどう膜炎などの眼症状
3)にきび、あるいは毛のう炎、結節性紅斑などの皮膚症状
4)外陰部潰瘍
です。そのほか中枢神経症状、腹痛などの消化器症状、血栓性静脈炎、動脈瘤などの血管症状、
なども伴うことがあり、多彩です。
検査
血液検査では白血球数、CRP、赤沈などで炎症の程度を測定します。
IgD値の上昇はベーチェット病に比較的特異的な検査結果です。
HLA-B51という白血球の膜上のタンパク質の型がベーチェット病と関係があるということが
わかってきました。
HLA-B51は、日本人全体では15%が陽性ですが、ベーチェット病患者では約60%が陽性となり診断の参考になります。
ただし、HLAの測定は保険診療では適応外です。
身体的な検査では、無菌の針を皮膚に刺すとそこに発赤が生じときに膿がたまってくることがあり、
これを「針反応」といい、これも比較的ベーチェット病に特異的な所見です。
通常、外来ではあえてこの検査を行わず採血のあとの針をさした後の状態を観察します。
診断
厚生労働省の研究班の作成した診断基準があります。
上述の4つの主な症状をすべて満たせば完全型のベーチェット病と診断します。
詳細はここでは省略します。厚生労働省のホームページなどをご参照ください。
治療
炎症を抑える非ステロイド系消炎鎮痛剤、コルヒチンなどの内服を行います。
眼のぶどう膜炎に対してはシクロスポリン(商品名ネオーラル、サンディミュン)
あるいはタクロリムス(プログラフ)などの内服を行います。
新しい治療
関節リウマチでも使う「生物学的製剤」(商品名レミケード)が
2007年3月からベーチェット病のぶどう膜炎でも使用可能となりました。
詳細は担当医師から説明を受けてください。
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